保険会社が提示してくる交通事故の示談金の相場~その金額、納得できますか~

示談金相場

はじめに

交通事故の発生は、下の表のとおり、年間約50万件近く、年々減少傾向にあるとはいえ、意外と身近に被害にあわれる方がいらっしゃるものです。交通事故は思いもよらず突然発生するものですが、自賠責以外にも任意保険に加入しておくことが通常で、ドライバーの皆さんは「明日は我が身」と考えているものです。

 

平成29年交通事故発生状況

発生件数 47万2,165件 前年比 -27,036件 -5.40%
うち 死亡事故件数 3,630件 前年比 -160件 -4.20%
重傷事故件数 3万4,940件 前年比 -440件 -1.20%
軽傷事故件数 43万3,595件 前年比 -26,436件 -5.70%
死者数 3,694人 前年比 -210人 -5.40%
負傷者数 58万0,847人 前年比 -38,006人 -6.10%
重傷者数 3万6,895人 前年比 -461人 -1.20%
軽傷者数 54万3,952人 前年比 -37,545人 -6.50%

(出典:公益財団法人 交通事故分析センターHP「交通事故発生状況」より)

保険加入のほか、正しい知識を持っておいて、事故に備えることも重要です。特に、人身事故の場合の「示談金」に関する正しい知識は、持っておいたほうがよいでしょう。

とくに、不幸にして被害者になった場合、保険会社が提示してくる交通事故の示談金には、自賠責保険と任意保険の間に額の開きがあるケースもあります。さらに裁判で高額の損害賠償請求が認められるケースなどもあり、示談金として提示される金額で満足できるかどうかは、結論から言うと微妙なものがあるでしょう。

示談金って何?

ところで、よく見聞きする示談金、という言葉ですが、「示談金のほかに、損害賠償を裁判で請求できるのかしら」「示談金の中には慰謝料が含まれるの?」と事故の場合のお金の知識はあやふやなままになっていることも多いものです。

これらの疑問は、次の式を見ると解消されます。

示談金=損害賠償金=損害額+慰謝料

示談金とは、損害賠償金のことです。また、「示談」というのは、和解契約により得られる金銭賠償のことで、裁判をしなくても得られますが、和解契約を公正証書にしておくと、判決と同じ効力がある、というように、裁判をすることがそれ以上はできなくなるもの、と考えておいたほうがよいでしょう。

また、損害賠償金=損害額+慰謝料のことで、慰謝料は事故による精神的苦痛を「慰謝する」つまり、慰めたり和らげたりするお金のことです。慰謝料は、「示談金の一部」として提示されます。しかし、一定の事故にしか慰謝料は支払われないことには注意が必要です。

示談金の相場

 示談金は、任意保険に入っている加害者の場合、通常保険会社が提示することになります。

「一体このお金は、安いの?高いの?」

そんな疑問をお持ちの方に、ケースに即して示談金の相場についてここで解説いたします。

  • ケース1.交通事故で車や物が壊れてしまった(物損事故)!
  • ケース2.  通事故でけがをした!
  • ケース3.交通事故で家族がなくなってしまった!

*物損と死傷が同時に発生する場合は、ケース1と2、またはケース1と3の説明が当てはまります。

示談金の相場を理解する:ケース1.交通事故で車や物が壊れてしまった!

 交通事故で幸いにしてけがはなかったけれども、車が故障した・そのほか物が壊れたという場合、示談金は損害が出ている以上、支払われます。

相場が問題になりますが、ポイントとしては、下記のようなことが挙げられます。

  • 車や物の修理代がベースとなるが、全損の場合には、車を買い替える費用が支払われる
  • 高級車や新車に近い車は、評価損も損害額に含めることができる場合がある。しかし、慰謝料はまず支払われない
  • 車の場合、使えない間の代車費用も請求可能なことがある(営業車両等、必要性の認められる場合)

車の修理代や買い替え費用を示す領収書等帳票類・車のスペックや年式を示す資料・写真等の証拠を準備して、交渉に臨むことが必要となります。ただし、実際に示談に至る際、修理や買い替えをする必要はありません。見込み額でも請求が可能です。見積もり・同年代同型式の車の中古車相場などが証拠として使えることになります。

慰謝料は、物が故障から直れば精神的苦痛はなくなる、と考えられており、車の物損ではまず認められないと考えられます。物は客観的に評価されるため、「親から譲り受けた大事な車でほかに代えがたい」といった主観的な事情があったとしても、慰謝料が原則はない、と考えられるのです。

しかし、車が壊れたケースではなく、家の塀が壊れて、生命・身体に危険が及んだケース、交通事故でペットを殺傷してしまったケースで数万から数十万の慰謝料が認められたケースが下級審の判例にあります。

なお、新車や新品の価値を基準に修理代や買い替え費用が支払われるのではないことに注意しましょう。経過年数と減価償却を考慮した物の価値・修理代が基準とされています。 

示談金の相場を理解する:ケース2.交通事故でけがをした!

 交通事故でけがをした場合、損害の中には、

  • 積極損害 けがの治療代・入院費・付き添い代などの看護費・通院治療費および交通費等
  • 消極損害 休業損害・後遺障害による逸失利益

が含まれます。また、

  • 慰謝料

についても請求可能です。

積極損害は、現実の損害額を請求することができます。しかし、消極損害は、現実の損害額と、見込みを計算する後遺障害の場合の逸失利益のように、推定計算により計算される損害とがあります。それぞれの相場と計算方法を見ていきましょう。

  • 積極損害の相場と計算方法

積極損害の計算は、実際治療・入院・通院のためにかかった費用をベースに計算されます。

入院のみですべての傷害が治癒するケースもあまりないでしょうから、通院費も積極損害に含められて計算されることが通常です。

また、学齢のお子さんにけがをさせてしまったケースなどは、学校に通えなくなってしまったことから、学力低下を防ぐための家庭教師代等の学習費用も積極損害として支払われるケースがあります。

さらに、入院中の生活にかかる諸雑費も積極損害に含めることが可能です。

消極損害の相場と計算方法

休業損害

自賠責保険基準と任意保険および裁判基準では計算基準が違います

交通事故によって、働けなくなってしまった場合には、給与・賞与・諸手当から休業によって得られなくなる収入が生じます。これを休業損害として請求することが可能です。休業日数×1日当たりの収入を計算します。

しかし、休業損害は、日額の算定基準が自賠責保険基準と任意保険及び裁判基準では異なります。自賠責保険では、1日当たりの「基礎収入」が、5,700円から上限19,000円で計算されます。

これに対して、任意保険においては、もう少し実収入に近い数字が基準となります。さらに、弁護士基準であれば、裁判で認定されることが予測される事実関係が基準となりますから、5700円未満の収入しかない場合は、その額が適用されますし、19,000円を超えることが立証できれば、この額が基礎収入となり、休業損害が計算されます。

自賠責保険基準は、保険金額が120万円でおさえられているため、損害額が120万円未満の場合に適用されます。これを超えると、任意保険基準によることとなります。

注意すべきは、専業主婦・無職の場合でも、休業損害がもらえるケースがあることです。下級審に裁判例には認められたケースがあります。額は自賠責保険の範囲内である、とされています。

後遺障害の場合の逸失利益

「症状固定」後、障害等級を基準に算定されます

後遺障害は、損害保険料率算定機構が等級を認定します。後遺障害の等級(軽い順から14級から1級)にしたがった損害額が計算され、自賠責から損害賠償金の支払いがおこなわれます。もう治療ができなくなった時点=症状固定の時点で認定され、支払い手続きが行われます。

計算式:逸失利益=労働能力喪失率×収入額×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

労働能力喪失率は、14級の5%から、1~3級の100%まで、障害のために労働能力を喪失した割合を表す率です。また、ライプニッツ係数は、法定利率5%を複利計算し、中間利息を控除して、一時払いにするための係数として使われています。

慰謝料の相場と計算方法

慰謝料についても、逸失利益のところで説明した後遺障害の等級により相場が算出されています。基準収入額がここでも自賠責保険・任意保険基準・弁護士基準が異なるので、下の表のとおり、同じ等級でも三種類の額となります。

後遺障害等級 自賠責保険 任意保険基準 弁護士基準
後遺障害1級 1100万円 1300万円 2800万円
後遺障害2級 958万円 1120万円 2370万円
後遺障害3級 829万円 950万円 1990万円
後遺障害4級 712万円 800万円 1670万円
後遺障害5級 599万円 700万円 1400万円
後遺障害6級 498万円 600万円 1180万円
後遺障害7級 409万円 500万円 1000万円
後遺障害8級 324万円 400万円 830万円
後遺障害9級 245万円 300万円 690万円
後遺障害10級 187万円 200万円 550万円
後遺障害11級 135万円 150万円 420万円
後遺障害12級 93万円 100万円 290万円
後遺障害13級 57万円 60万円 180万円
後遺障害14級 32万円 40万円 110万円

入通院の場合の慰謝料も、自賠責基準・任意保険基準及び弁護士基準で計算されます。計算式は、1日当たり基礎収入額に治療日数または実通院日数×2を乗じたものとなります。自賠責基準で入通院慰謝料の1日当たり基礎収入額は上限が4200円となっており、任意保険基準は現在自由化され、また、計算方式も非公開であるため、相場というと見えにくいものとなっています。しかし、自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準の順に慰謝料が高くなる構造は、後遺障害の場合と変わらないと考えられます。

示談金の相場を理解する:ケース3.交通事故でご家族がなくなった

この場合には、①葬儀代 ②死亡のための逸失利益 ③慰謝料(死亡本人および遺族)が示談金として支払われます。

 

  • 葬儀代 自賠責保険の場合、葬儀代は60万円が限度との規定があります。しかし、立証可能な場合は、必要かつ妥当な実費として100万円まで認められます。弁護士基準では150万円ほどであり、裁判例で見ますとそれ以上認められたケースがあります。これも立証が可能な場合です。

 

  • 逸失利益の相場と計算方法 考え方は後遺障害の場合とあまり変わりがありませんが、労働能力喪失率の代わりに、生活費が控除されます。死亡された方は生活費を使わなくなるためです。基礎収入から一定の率(30%~50%)を控除することになります。

 

  • 慰謝料 自賠責基準か、通称日弁連の「赤本」に記載のある弁護士・裁判所基準によるかで、慰謝料の額が変わってきます。自賠責基準では、本人が一律350万円、請求者1名の場合が、550万円、2名で650万円、3名以上なら750万円となり、被害者の被扶養者がいる場合は、さらに200万円加算となります。これに対して、弁護士・裁判所基準ですと、2000万円~2800万円と、さらに高額になります。

 

まとめ

 示談金の相場は、裁判所で認められることが予想される額が基準の内容となる弁護士基準と、保険会社基準とでは額に開きがあります。また、個別の事情も裁判所での立証にかかっているとすると、なかなか一般人には予測が正確にはつきません。

納得のいかない示談金の提示を保険会社からされた場合や、弁護士に早めに相談し、疑問点を解消しながら戦略を立てることも一つの正しい対応策といえるでしょう。

無免許運転事故を起こしたらどうなる?対策と過去の事例をご紹介

免許証

最近、ニュースでも話題になることが多い「無免許運転事故」。無免許と聞いてイメージするのは、そもそも免許を取っていないと思いがちですが、他にも免許の有効期限が切れて更新に行っていない方も無免許扱いになります。無免許の状態で車を運転することは法律に違反していますし、その状態で事故を起こすと軽度の被害であっても深刻な交通違反として罰せられます。

また、未成年が無免許運転事故を起こした場合、親に責任が問われることになって罰金刑などを受けることも。もし保険に入っていたとしても補償内容が大きく変わるので、通常の事故とは全く違う対応になります。

無免許運転事故の事例

過去に起こった無免許運転事故をいくつかご紹介します。

免許取り消し処分を受けた後に再取得せずに無免許のまま人身事故を起こした方は、相手側に軽傷を負わせました。通常なら、保険会社を介して示談を行なう内容なのに無免許だったことで逮捕されています。

未成年者が起こした事故は、運転の経験が全くない純無免の状態で速度超過したまま歩道に乗り上げて塀などにぶつかりました。その際に乗っていた同乗者が重傷負い、書類送検されています。

同じく未成年者が電柱に衝突した事故もあります。これは、事故が起こったときに同乗者にケガをさせただけでなく負傷者を置き去りにした事故です。無免許でひき逃げという最悪な事故のため、深刻な罪を負わせられる可能性があります。

無免許運転を防ぐには

では、どうやって無免許運転を防ぐのでしょうか。未成年者が無免許で運転するとなれば、車を提供する人間が必要になります。大人の中には、ちょっとだけなら運転させてもいいだろうと思っている人もいるので、そういった人間と付き合わさせないようにすることが大切です。それに、車を提供した人間も罰せられる対象になるため、見つけ次第すぐに警察へ連絡するのも有効な手段といえます。車がなければ無免許運転は起こりませんので、しっかりと子どもの様子を日頃から見ておく必要があります。盗難した場合は、無免許だけでなく盗難としても罰せられます。

どちらにしても親の監督不届きとして扱われることが多いため、日頃から注意しておいたほうがよいでしょう。もちろん、無免許運転した未成年が見つかったり、事故を起こしたりしたら本人も罰せられます。損害賠償金額の請求もあるため、支払い能力がない未成年者だと親が代わりに支払うことになります。

有効期限切れの免許証を持っているのなら、早急に免許の更新へ行きましょう。免許の更新さえしておけば、無免許運転になることはありません。それに、有効期限切れの免許証を所持しているだけでも違反になるので罰金刑になることもあります。更新期限が過ぎても手続きを行なえば大丈夫なので、早めに行くことをおすすめします。入院などでやむ負えず何年か行けなかった場合も、証拠となる書類などを持って行けば更新ができます。

車は便利な乗り物なので乗りたくなる気持ちは分かります。しかし、間違ったら大きな事故につなげる乗り物でもあるのです。そのため、教習所に行って車の交通ルールや技術を身につけてから免許証を取得する環境が整っています。免許の有効期限があるのも、更新のときに講習を受けることで再認識できるからです。それに、何度も交通違反を繰り返している人が免許停止や取り消しになるのも、意識が足りないことの代償なので仕方がないことです。

このように、車になぜ免許が必要なのかという背景を理解していれば、無免許運転しようと思わないはず。今一度車を乗ることの重大さを考えてみてはいかがでしょうか。そう意識するだけでも、無免許運転を防ぎやすくなりますし、事故だって起こることがなくなるでしょう。

保険会社に治療打ち切りを言われたら

通院について

交通事故などで怪我をしてしまった被害者はその治療のために通院しなければいけませんが、治療中なのに保険会社は治療打ち切りの連絡を行うことがあります。一般的に病院への治療費の支払いは加害者の保険会社が担当し、被害者は治療費を自腹で支払うことは少ないですが、治療を打ち切りますという通告は治療費の支払いを拒否することを意味します。
打ち切り通告を行う理由として、治療費や傷害慰謝料の負担を少なくしたり早期に症状固定にし示談で纏めることがあげられます。交通事故の被害者が怪我の治療を続けると治療費の負担が増えていき、会社が気にしているのは傷害慰謝料の負担です。傷害慰謝料は被害者の治療による精神的苦痛などを金銭的に補償するもので、被害者の治療が長くなると慰謝料の金額が増大します。会社はなるべく期間を短縮しようとするでしょう。

被害者は打ち切り通告を受けた場合、このような会社側の目的を理解しておくと参考になります。治療を早め終了すると交通事故の示談タイミングを早める効果もあり、不利な後遺障害認定などを避けることが可能です。被害者が重傷を負うと適切な後遺障害認定を受ける際、適正な期間にわたって治療を受けるようになります。治療を受けていない状態で治療を終わると、本来の認定を受けられなくなるケースもあります。被害者は会社からの打ち切り通告に関して自分に非があるからと悩むこともありますが打ち切り通告は会社側の都合に基づくもので、被害者は適切な対応を行わなければいけません。

弁護士に交渉してもらう

被害者は打ち切り通告を受けた場合、レントゲンやCTによる他覚的所見などがある場合や所見がなく痛みや痺れといった自覚症状だけの場合があります。骨折箇所が癒合していないといった他覚的所見があるなら、主治医の症状固定の診断がないと通院の必要性があります。治療打ち切り通告を受けたなら、被害者は通告を無視し通院を継続すると足りるでしょう。被害者は自覚症状だけを理由に通院する場合は治療打ち切りに対して何かしらの対処が必要です。会社から打ち切り通告を受け治療を継続しながら費用を会社に負担してもらおうとするなら、弁護士に依頼し交渉してもらう方法があります。

被害者は自力で交渉しても打ち切りを決めた会社の判断を覆すことは難しいでしょう。手順として被害者は主治医に治療継続ができるかどうかを確認し、治療継続が必要なら診断書を書いてもらいましょう。診断書をベースに弁護士を通して会社と交渉すると効率良くすすめることが可能です。治療打ち切りの判断を覆せないなら、主治医と相談し治療を継続するかを決める必要があります。治療継続する場合、診断書を作成し健康保険を利用して費用を負担し通院を継続するようになります。立て替えた費用は最終的に保険会社との示談する際、示談金に含めて精算することが可能です。会社から治療打ち切り通告を受けたとしても、被害者は治療を終了する義務はありません。

しっかりと請求する

怪我が治癒するか症状固定するまで、治療の必要性があり治療費を会社に請求できます。但し、自覚症状だけを理由にして痛みや痺れなどの症状が継続していても、必ずしも治療継続が必要とは言えないケースもあるでしょう。痛みや痺れなどが残っていても症状が良くも悪くもならないといった症状固定の状態になっている可能性があるためです

症状固定の判断は主治医が判断することになり、被害者を継続的に診察してきた主治医が怪我の状況や改善見込みを最も良く理解しているからです。被害者が優先すべきことはきちんと治療を行い後遺障害などが残らないようにすることですが、主治医と相談し症状が大きく改善する見込みがない状態なら、治療継続に固執することもないでしょう。保険会社との争いを避けるため後遺障害申請という別の案件を検討する方法もあります。

交通事故に対してのADRの対応

ADRとは?

ADRとはAlternative Dispute Resolutionの略で、訴訟代替手続の意味ですが、訴訟に準じた手続で法律的な整理をする機関のことです。

さまざまな争いがあるので、いろいろなADRが存在していますが、損害保険に関しては、現在は外資系および国内の保険会社に対して二つグループがあります。

今回は、国内の保険会社に対して申立ができるグループを例にとってお話を進めて行きます

交通事故に関しては民事上の損害賠償が必要なので、まさにADRの得意とするところですが、手続のポイントについて理解をしておく必要があります。

紛争解決手続の申立は、原則として保険の請求権を持つ、いわゆる被保険者が自分の権利を主張するために行いますが、損害保険の場合は、この他に事故の被害者が同じく自分の権利を主張するために行う場合があります。

自動車保険の約款は被害者の直接請求権を認めており、この直接請求権に基づいて、被害者を申立人として、ADRの紛争解決手続を直接保険会社に対して行います

訴訟の手続き

訴訟は加害者および被害者の事故当事者が民事上の損害賠償請求を起こし、保険会社は事故当事者ではないので、訴訟の結果を担保するために、保険会社に対しては訴訟告知をする手続となります。

ADRの場合は、約款上の被害者の直接請求権に基づき、保険会社をみなし当事者として申立する場合が実務として効率的なので、被害者から保険会社に対して直接申立てる場合が殆どです。

実際に申立があったと仮定してご説明をさせていただきます。

申立人から文書で申立があったら、この文書について申立人と打合せをして、当該文書を紛争解決委員と保険会社に送ります。

文書は個人情報でもあるので、必ず申立人の了解をいただいてから送る必要がありますし、送れなければ手続に入れませんので、申立人に拒否される可能性はありません。

紛争解決委員としては、交通事故に詳しい弁護士を委員として複数人リテインする必要があり、ネットワークを作っておく必要があります。

実際の申立があれば、各事案を担当してもらいます。

実際の手続では、被害者である申立人の意見聴取を行い、改めて二週間後を目途に保険会社の意見聴取を行います。

申立がされる前に、事故原因の調査や対人であれば治療状況の調査等がされている場合が殆どですので、

加害者は当時者ではありますが、保険会社が認定すれば民事上の解決はできるので、必要に応じて意見聴取を行います。

双方の(関係者含む)意見聴取終了後、委員判断ではありますが、追加調査等の手続が不要であれば、双方を呼んで和解手続を行います。

追加調査等の手続が必要であれば、その手続について、関係者の了解を取り、手続終了後に和解手続をセットします。

被害者と保険会社の担当者はADR申立前に面識があり示談交渉を継続している場合が殆どです。

解決を焦らないことが重要

紛争解決手続の中で感情的になってもいけないので、同じ場所に同時にいることは避けて、別のグループとして手続を進めるように配慮しています

委員のリードで何とか和解手続を進めることになりますが、艱難辛苦を乗り越えて各グループと調整ができれば、一件落着ですが、そこに至るまでに紛争解決委員の苦労があります。

調整ができれば、あとは和解調書を作るだけですが、当事者の署名捺印を取付ける必要があります。

まず、手続に出席している被害者の署名捺印を取り付けて保険会社に手交し、保険会社経由で加害者の署名捺印を取り付けますがここの期日管理も慎重に行う必要があります。

関係者がベストを尽くし、しかも専門家が揃っているので、かなり高い和解解決率になりますが、どうしても解決せずに訴訟に移行する場合もありますが、論を尽くした結果なのでやむを得ないと思います。

交通事故の慰謝料の増額理由にあてはまるならあきらめないで

慰謝料増額

交通事故は体の調子が戻ってよかったでは終わりません。実は治療が終了してからの方が大変で、今度は精神的に負担が重くのしかかり辛い思いをすることも出てくるのです。

示談金の交渉

その理由は示談金の交渉です。相手方が任意保険に入っている場合は多くは保険会社との交渉になるのですが、治療費や休んだ仕事の休業補償など当然、その額だけ支払ってくれるだろうと思いがちですが、実情は通院費ども不要な診療と打ち切ったり、給与計算も満額ではなかったりと不満の残る計算方法であることが多いです。さらに明確なルールの幅が狭くケースバイケースが多いのが慰謝料です。

この部分で苦痛を補償してい欲しい、生活の犠牲を補償してほしいと思うのですが、なかなか納得のいく金額になっていないことが多いです。しかし、増額理由を知っておくと交渉の際にも有利になるかもしれませんし、前もってそれを証明する資料などを集めておくこともできます。一番わかりやすいのが加害者の運転の悪質さです。交通ルール違反があったときはそれに対して刑事でも民事でも加害者にマイナスに働きます。スピード違反や信号無視、前方不注意、回転禁止場所でのUターンなどが挙げられます。さらに態度が悪質というときも増額理由になります。

 

一般的な謝罪や入院先へのお見舞いなどが一切なく、連絡を取ったときに暴言を吐くなどの場合はそれを記録にとっておくと証拠となり反省の色がないと判断されます。また、治療中に仕事ができなかったため、会社や家族に大きな影響を与えた場合もその状況が加味されて、通常の休業補償よりも重大とみなされることもあります。その時は慰謝料でプラスされることもあります。

慰謝料増額理由

例えば特別な状況で仕事で海外へ行く予定だったがそれが不可能になって、他の社員で対応せざる負えなかったがその時に時間の変更やクライアントにも迷惑をかけた、子どもの受験の面接に行けなくなった、逆に被害者が受験生で受験ができなくなった時など通常の慰謝料計算では反映しにくい事情があれば増額理由になります。このほかにも精神的な苦痛を強く伴う場合も増額理由になります。例えば交通事故によって治療中に見た目にわかる傷ができて外に出るのが苦痛であったときなどは理由の1つになります。顔などにあざや傷があるときは誰でも人の目が気になります。

もしそれが消えずに後遺症となれば、それは後遺障害として認定されるのでそちらの金額に反映さえますが、後遺障害ではなくても一時でも露出部分に傷などができて外に出るのもためらわれるとなれば交渉の余地は十分にあります。しかし、素人が増額できる理由があると思っても、それを交渉慣れしている保険会社相手に説得できるかというと難しいところがあります。

そんな時には弁護士を依頼して交渉を代行してもらうと良いでしょう。というのも弁護士は裁判ができる立場です。慰謝料をはじめとした示談金にはある程度相場があります。保険会社の相場は出費を抑えたいですから相場は低く見積もられいます。

それに対して裁判所の基準は高いですので、裁判を弁護士に起こされてしまっては高い示談金の上に裁判費用までとなるので、保険会社も裁判は避けたがります。そのため弁護士が出てくるだけで増額されることが多いです。もちろん、弁護士は法的な根拠に沿って妥当ではない金額を指摘するので、それに反論ができないので従うことになります。しっかりと法律通りの金額に増額によって正してくれる役目をしてくれるのです。

交通事故は慰謝料がポイントになります。ここでしっかりと怪我の程度や生活の犠牲分をカバーできている金額に交渉することが重要になってきます。増額理由がある、プロに頼むなど対策をとるようにしましょう。

頸椎捻挫(むちうち)で後遺障害認定を受けるためのコツ

後遺障害認定とは

交通事故でケガをして治療しても完治しない場合があります。ケガが今以上に回復する見込みがない場合、後遺障害認定を受け後遺障害保険金を受け取ることができます。しかし後遺障害認定を受ける際、残存する後遺障害に見合った後遺障害認定を受けられない場合や、後遺障害認定されない場合もあるのです。そのようなケースを回避するにはどうすれば良いのでしょうか?

後遺障害には1級から14級までの等級に分かれています。等級数字が小さいものが重篤な障害が残存していることになります。受け取れる保険金は等級ごとに設定されたパーセンテージで決まります。後遺障害保険金を受け取るには後遺障害認定を受けなくてはなりません。後遺障害認定を受ける場合、後遺障害診断書を提出します。後遺障害診断書は症状固定してから医師に作成していただくものです。症状固定とは、ケガの症状が安定し、今後治療を行っても医療効果が期待できない状態のことです。症状固定していないのに通院をやめてしまうことのないようにしてください。途中で治療をやめてしまうと後遺障害認定がうけられなくなってしまいます。後遺障害診断書によって後遺障害の等級が認定されます。

後遺障害認定において障害の度合いを数字で確認できないものが、後遺障害認定されない場合が多いです。例えば可動域制限のある障害が残存した場合は、後遺障害診断書作成時の可動域計測で可動域を数字で表せますが、14級の場合は神経症状で「局部に神経症状を残すもの」とされています。この神経症状を残す状態とは、痛みが継続的に残る状態のことです。

頸椎捻挫(むちうち)

頸椎捻挫(むちうち)などで治療していたにもかかわらず、首に継続的な痛みが残っている場合、レントゲン上では何の異常も見らない場合がほとんどです。痛みが残っていることを本人の申告内容によって判断するしかありません。結果、後遺障害認定を受けられない場合も出てきます。後遺障害14級に認定のトラブルは多いです。中には痛みもなく完治しているのに「いつまでも痛くて日常生活にも支障をきたしている」などと虚偽の申告をする人も少なからずいるようなので、保険会社認定も慎重になっています。数字やレントゲンで傷害の度合いが分かるものでも、実はもう少し上の等級の認定を受けることのできるケースもあります。そんな時、自分で保険会社に交渉するのは難しいでしょう。保険会社はいくつもの事例を担当してきていますので知識も豊富です。ですので後遺障害認定については交通事故に強い弁護士に相談するといいでしょう。また自分のケガで残る障害が何級で傷害認定されるのが妥当なのか弁護士に相談することで知ることもできます。弁護士は様々な事案を解決してきたのですから、医学的根拠もふまえ法律の専門家としてアドバイスしてくれるはずです。後遺障害認定適切な後遺障害認定を受けるために一人で悩まず、弁護士の力を借りることが重要だと言えます。

加害者請求と被害者請求の違いは?

被害者請求

加害者請求と被害者請求

交通事故によって負傷を負った場合、治療費や慰謝料などの損害に対する補償は加害者が加入している自賠責保険と任意保険から契約の限度内の金額が支払われます。加害者が被害者へ支払った賠償金の額を限度に自賠責会社へ領収書などの必要書類を提出して請求する方法を加害者請求といいます。対して加害者側から十分な賠償を受けることができない場合に被害者側から請求する方法を被害者請求といいます。被害者請求は被害者自身が自ら後遺障害などの被害を請求できるので透明性が高く等級に応じた自賠責限度額を保険会社との示談を待たずに先取りできるメリットがあるので事故に合ってしまい被害者になった場合に安心です。また加害者請求の場合むち打ちなどの画像だけでは証明しにくい神経症状や高次脳機能障害は認定されない可能性があります。被害者請求の場合は書類をいくらでも提出できるため後遺障害等級の認定が認められやすくなります。

被害者請求は手間がかかる!

しかし被害者請求を行うには事故発生状況報告書なども被害者が全て記載しなければならないので手間がかかります。加害者請求の場合には加害者が行ってくれるので被害者側は手間が少なく済みます。また後遺障害診断書や診療報酬明細書を病院で作成してもらう必要があります。これらにかかる費用は自分で支払うことになりますが、後遺障害等級が認定された場合には後遺障害診断書作成費用は必要経費として任意保険会社に請求することができます。

そして加害者請求の場合には原則として加害者と被害者の間で示談が成立していることが必要になります。すぐに解決できれば簡単に済むのですが、相手の要求と嚙み合わずにもめてしまい長引いてしまう場合には保険会社に相談し交渉を行ってもらった方が良いでしょう。示談金の相場は状況によっても変わってきますのでお互い納得いくまでしっかり話し合う必要があります。

また一般的な交通事故の場合、加害者が判明しているなら損害賠償請求権の時効は3年になります。請求を行う際だいたい1ヶ月から2ヶ月ほどで必要書類を揃えることができるのですが、もしも間に合いそうになかったり手続きを忘れており時効を引き延ばしたい場合には時効中断診断書の書類を提出する必要があります。

どちらにもメリットとデメリットが存在するのですがレントゲンなどで判断しにくい症状が感じられる場合には被害者請求を行いより確実に等級にあった賠償金を請求しやすくなります。自分が納得いく方法で請求を行いましょう。

交通事故で適用されることがある「無過失責任」とは?

日常生活や取引社会などの通常のケースでは、人が何らかの責任を負うときには「故意」や「過失」が要求されることがほとんどです。まったく不注意がなかった場合にまで責任が科されるのは負担が重すぎるからです。しかし、交通事故の場面では、一定の場合に「無過失責任」に近い責任が科されるケースがあります。交通事故の無過失責任とはどのようなものなのでしょうか?
今回は、もらい事故でも責任を負ってしまう可能性がある、交通事故の「無過失責任」について解説します。

民法上は過失責任が原則

交通事故に遭ったとき、自分の側に責任がなければ相手に対して賠償金支払いをする必要はありません。そして、過失が少なければ少ないほど、支払うべき賠償金の金額が少なくなります。このことは、交通事故以外の通常の不法行為でも同じです。他人に何らかの迷惑をかけたとしても、自分にまったく故意や過失がなければ、責任を負うことはありません。

このように、過失によって責任が発生したりしなかったり、また過失の程度によって責任が重くなったり軽くなったりするのは、民法上、「過失責任主義」がとられているからです。

過失責任主義とは、「故意」や「過失」がある場合に限って発生した損害に対して責任を負う、という原則です。不法行為について定める民法709条に定められています。
そこで、交通事故が起こった場合でも、基本的には過失責任主義が適用されて、もらい事故のケースなどでは自分が相手に支払う賠償金は発生しなかったり少なくなったりすることが普通です。

交通事故の無過失責任とは

交通事故の場合、民法の過失責任主義が修正されている部分があります。それは、自動車損害賠償保障法(自賠責法)の第3条に定められた、自動車運行供用者責任です。

ここには、

「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」
「ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。」

と定められています。ここでは、「故意」や「過失」といった要件が必要とされていないので、故意過失がなくても責任が発生する可能性があります。

運行供用者責任が発生する可能性があるのは、自動車の運転によって利益を受けているものという意味合いなので、自分で運転する場合に限らず、他人に自動車を貸して運転させていたケースなどでも運行供用者責任が発生する可能性があります。

たとえば、友人に車を貸していて、その友人が交通事故を起こした場合には、自分に特に過失が無くても運行供用者責任により、被害者に対して賠償責任を負う可能性がある、ということです。

運行供用者責任を免れる方法

自賠責法の運行供用者責任は、完全な無過失責任ではなく、一定のケースでは責任を免れることも可能です。

上記の自賠責法3条の条文をよく見てみると分かりますが、「ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。」とあり、責任を免れることがあるケースが定められています。

自賠責法3条の但し書きによって責任を免れるためには、運行供用者側が以下の3つの要件を立証する必要があります。

自分や運転者が注意を怠らなかったこと

まずは、自分や運転者が注意を怠らなかったことの証明が必要です。自分が運転していた場合には、自分の運転に過失がなかったことを証明できれば運行供用者責任は免れます。友人などの他人に運転させていたケースでは、その他人に過失がなかったことを証明する必要があります。

被害者や運転者以外の第三者に故意過失があったこと

被害者や運転者以外の第三者に故意過失があり、それによって交通事故が引き起こされたことの証明が必要です。たとえば、被害者が信号無視をしていた場合や速度超過をしていた場合、脇見運転をしていた場合などには被害者に過失が認められますし、第三者である歩行者が突然飛び出してきたので避けるために事故になった場合には、運転者以外の第三者に過失が認められます。
これらのケースででは、運行供用者責任を免れる可能性がありますし、完全に免れなくても過失割合に応じた過失相殺をして、支払金額を減らすことができます。
これらの被害者や第三者による故意過失についても運行供用者側が立証する必要があります。

自動車に構造上の欠陥や機能障害がなかったこと

最後に、自動車に構造上の欠陥や機能障害がなかったことの証明も必要です。
たとえば、自動車の車検や定期点検をきっちり受けていて、自動車の状態に何の問題もなかったケースでは運行供用者責任を免れたり、責任が軽くなったりします。反対に、きちんと整備を受けていない場合には、より重い責任が科されることになります。

以上の3要件をすべて立証できれば、自分や他人に運転させていたケースでも運行供用者責任を免れることができる可能性があります。

立証責任の転換

以上のように、自賠責法3条の運行供用者責任は「無過失責任」とも言われますが、完全な無過失責任ではありません。上記の要件をすべて立証すれば免れることができるという一定の条件がついているので「条件付無過失責任」とも言われます。

このような規定のことを、法律上は「立証責任が転換されている」、と言います。

民法上の不法行為の原則においては、請求者側が、相手の「故意過失」の存在を立証する必要があります。これに対し、自賠責法上の運行供用者責任では、請求者は相手の「故意過失」の存在を主張立証する必要はなく、請求を受けた相手側の方が、「自分や運転者に恋過失がない」ことを立証しなければならない、という構図になっています。

このように「故意過失」を立証すべき人が転換されているので、「立証責任の転換」を言われています。
立証責任が転換されているのは、被害者を保護するためです。

自賠責法は被害者の救済を目的とした法律で、交通事故では重大な結果が発生することも多いので、できるだけ被害者の保護を厚くすべきだという考え方があります。

また、自賠責保険は強制加入の保険なので、加害者側に無過失責任に近い責任を負わせても、加害者本人が自腹で支払いをするのではなく自賠責保険から支払いをすることができるという点も考慮されます。
そこで、自賠責法3条では、原則的に無過失であっても運行供用者責任を負わせることと規定しました。ただし、まったくの無過失であり、そのことを運行供用者が立証できたときにまで責任を負わせるのは不当だという考えから、上記の3要件を運行供用者が立証できた場合には、責任を免れることができると規定しているのです。

このように、自賠責法は、交通事故の特殊性と被害者保護の観点から、民法上の過失責任主義を修正して、立証責任を転換した運行供用者責任を定めているのです。

運行供用者責任が適用された事例

自賠責法上の運行供用者責任が適用されて、無過失に近いにもかかわらず責任が科されたと言われている事例があります。

それは、2012年4月30日におこった事故のケースです。この事故では、男子大学生が居眠り運転をして、センターラインをはみ出して走行したため、対向車線を走っていた車(会社役員が運転していた)と正面衝突した事故です。このような場合、会社役員側には過失がない(少ない)ので、賠償責任が発生しないと思われがちです。しかし、本件では、役員側の無過失が立証できていないことを理由として、役員側に4000万円もの支払い命令がくだされました。

この判決は、一見もらい事故なのに被害者に対して重すぎる責任を科したようにも見えます。実際に、「無過失責任を科すもの」「被害者に負担が重すぎる」としてネット上などでも話題になっています。

ただし、何度か説明しているとおり、自賠責法の運行供用者責任は完全な無過失責任というわけではなく、今回のケースでも会社役員側が無過失を立証できなかったことが理由で賠償責任が科されています。また、個別の事情を見ると、役員側にも問題があった可能性があるので、あまり一方的な見方をしない方が正しく事態を把握できます。

無過失責任が問題になったら弁護士に相談しよう

以上のように、交通事故では、自賠責法によって民法上の過失責任主義が修正されており、一部無過失責任に近い運行供用者責任が規定されています。これによって、自動車の運転をする人や他人に運転させている人に思わぬ責任が発生してしまうことは充分にあり得ます。

ただ、運行供用者責任は、まったくの無過失責任というものではなく、きちんと自分の無過失を証明できれば免れるものでもあります。交通事故が起こった時に自分や運転者の無過失を立証するためには、自動車内にドライブレコーダーを設置しておくなどの工夫をしておく必要があります。

ドライブレコーダーがあると、事故の状況を詳しく正確に残しておくことができるので、自分や運転者に過失がなかったことや相手に過失があったことなどを証明しやすくなるからです。

ただ、「無過失」を証明する方法は難しく、運行供用者責任の適用が問題になったときにどのように対処すれば良いかわからないことがあるでしょう。ドライブレコーダーだけで万全、というわけにもいきません。

そこで、運行供用者責任で無過失の立証が要求される場合には、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は訴訟のプロなので、立証責任が転換されている場合に無過失を立証する方法にも詳しく、訴訟対応を依頼したら、適切な主張と立証をして責任を免れることが期待できます。

今後交通事故にあって、自分に過失がないと思われるのに責任追及されて困ることがあったら、まずは交通事故問題に強い弁護士に相談しましょう。

まとめ

今回は、交通事故で自分に過失が無くても(少なくても)責任が発生することのある「運行供用者責任」について解説しました。

運行供用者責任は被害者救済のために民法上の過失責任主義を修正するものであり、「故意過失」の立証責任が転換されているため、無過失責任に近い規定内容になっています。
ただし、完全な無過失責任ではなく、運行供用者側が自分に過失がないことや被害者側に過失があったことなどを立証できた場合には、責任を免れることも可能です。
運行供用者責任が問題になったときには、ドライブレコーダーの記録などが役立ちますが、それだけでは不十分です。自分に過失がないと思われるにもかかわらず、運行供用者責任の追及を受けて困っている場合には、交通事故問題に強い弁護士に相談して、適切な対処をしてもらうことをおすすめします。

交通事故の際に役立つ弁護士費用特約

弁護士費用特約とは?

自動車のドライバーが任意で加入する自動車保険のなかには、対人賠償保険や対物賠償保険といった、基本となる補償内容のほかにも、いくつかオプションとして追加ができるものがあります。そうしたオプションのひとつとして掲げられるのが、交通事故にともなう弁護士費用を保険のほうで負担してもらえるという弁護士費用特約です。

一般的にいって、自動車保険に加入している人が交通事故に遭った場合には、その保険会社のスタッフが相手の保険会社を通じた示談交渉などをサービスとして行ってくれることになりますので、わざわざ弁護士に依頼をする必要はないこともあります。しかし、保険会社のスタッフができる範囲というのは、弁護士法の規定によって限定的なものとなっており、基本的には交通事故の加害者と被害者の双方にいくらかの過失があって、その過失割合を調整することで保険金の金額が変わってくるという、保険金を支払う側としての当事者性が認められる場合のみということになります。したがって、たとえば信号待ちで停車していたところ、後ろから別の自動車に追突されたといった、過失が相手の側にすべてあることがあきらかな交通事故の場合には、示談交渉をする必然性がないため、たとえ何らかのトラブルが発生したとしても、保険会社のスタッフの出る幕はないということになります。

弁護士費用特約の威力とは?

こうした場合に頼りになるのが、法律のプロである弁護士ですが、依頼をするにも着手金、報酬金をあわせてかなりの金額となってくるため、貯金がなければ支払いもむずかしくなってしまいます。そこで、自動車保険による弁護士費用特約がセットされていれば、いざというときの弁護士への依頼のための費用や、その前段で法律相談を受ける費用などが、保険のほうから支払われることになりますので、あわてて資金を準備しなくてもすむというメリットがあります。

弁護士費用特約は、たとえ本人に過失があった場合でも利用することができるという場合が多く、便利なものではありますが、一定の支払い限度額が決められていたり、利用できる回数や条件が別にあったりすることも考えられます。要するに、弁護士費用特約とはいっても、保険会社の各社共通というものではなく、それぞれの会社によって、微妙に内容が違っているということになりますので、契約をする前に、あらためて保険約款の内容をよく確認して、目的に見合ったものであるかどうかを知っておく必要があるといえます。

交通事故のことを弁護士に相談する相談メリットとは

弁護士相談メリット

弁護士への相談が必要な時というと、何か裁判を起こしたい時や、補償が必要な時ですから、いきなり急に弁護士への相談が必要になってくることなど少ないものです。ですが、思いがけず突然起こるのが交通事故です。交通事故も被害が鵜くなく、警察と保険会社に間に入ってもらいスムーズな対応ができ、スムーズな解決につながるのであれば良いですが、人身事故であったり、ケガや入院が必要になってしまうものだと話がややこしくなってしまうこともあるものです。ですから自分が損をしないようにするためにも弁護士を立てることが必要になってくることもあるものです。

相談メリットは、不要な補償をしなくても良くなる可能性が出てくるということです。交通事故の場合、自分側に過失があった場合はきちんと相手側に補償をしなければなりませんが、相手が強く出ていると、必要以上のお金を求められることもあります。ですから後々揉めないようにするためにもきちんと弁護士を立てておくことが必要です。普通の人は法律についても詳しく知らないこともありますし、相手がある程度法律に詳しい人間であれば、自分の隙を見て理不尽な要求もされてしまうことがあります。ですから自分の身を守るという意味でも弁護士の力を借りるとよいでしょう。

相談無料がよい!

また、力を借りるにしても、交通事故の裁判などに詳しい人の力を借りるようにしましょう。裁判をするにも話し合うにしても、家庭のことや事件性のあるものなどがありますから、交通事故のことについて詳しいところか慣れている事務所を探すようにもしましょう。また、まず最初に相談に行くような時は、相談料は無料のところを選ぶようにしましょう。相談だけでお金が取られてしまうと、その後裁判にまで発展した時にお金が持たないようにもなってしまいます。ですからまずは無料相談してから本格的な依頼をするようにもしましょう。また、自分の話について親身になって聞いてくれるところを選ぶようにもしましょう。何かのカウンセリングを受けたりする時にも言えることですが、自分と合わない人や仕事ぶりが気に入らないところに相談しても、うまくいかないことがあるものです。人と人とのかかわり合いを大事にしなければいけないですから、そういった意味でも自分と話が合う、波長があうなども大事にしていくと良いでしょう。また、事故の状況などは正直に伝えていくことも話し合いを解決させていくには大事なことです。