保険会社が提示してくる交通事故の示談金の相場~その金額、納得できますか~

示談金相場
弁護士

はじめに

交通事故の発生は、下の表のとおり、年間約50万件近く、年々減少傾向にあるとはいえ、意外と身近に被害にあわれる方がいらっしゃるものです。交通事故は思いもよらず突然発生するものですが、自賠責以外にも任意保険に加入しておくことが通常で、ドライバーの皆さんは「明日は我が身」と考えているものです。

 

平成29年交通事故発生状況

発生件数 47万2,165件 前年比 -27,036件 -5.40%
うち 死亡事故件数 3,630件 前年比 -160件 -4.20%
重傷事故件数 3万4,940件 前年比 -440件 -1.20%
軽傷事故件数 43万3,595件 前年比 -26,436件 -5.70%
死者数 3,694人 前年比 -210人 -5.40%
負傷者数 58万0,847人 前年比 -38,006人 -6.10%
重傷者数 3万6,895人 前年比 -461人 -1.20%
軽傷者数 54万3,952人 前年比 -37,545人 -6.50%

(出典:公益財団法人 交通事故分析センターHP「交通事故発生状況」より)

保険加入のほか、正しい知識を持っておいて、事故に備えることも重要です。特に、人身事故の場合の「示談金」に関する正しい知識は、持っておいたほうがよいでしょう。

とくに、不幸にして被害者になった場合、保険会社が提示してくる交通事故の示談金には、自賠責保険と任意保険の間に額の開きがあるケースもあります。さらに裁判で高額の損害賠償請求が認められるケースなどもあり、示談金として提示される金額で満足できるかどうかは、結論から言うと微妙なものがあるでしょう。

示談金って何?

ところで、よく見聞きする示談金、という言葉ですが、「示談金のほかに、損害賠償を裁判で請求できるのかしら」「示談金の中には慰謝料が含まれるの?」と事故の場合のお金の知識はあやふやなままになっていることも多いものです。

これらの疑問は、次の式を見ると解消されます。

示談金=損害賠償金=損害額+慰謝料

示談金とは、損害賠償金のことです。また、「示談」というのは、和解契約により得られる金銭賠償のことで、裁判をしなくても得られますが、和解契約を公正証書にしておくと、判決と同じ効力がある、というように、裁判をすることがそれ以上はできなくなるもの、と考えておいたほうがよいでしょう。

また、損害賠償金=損害額+慰謝料のことで、慰謝料は事故による精神的苦痛を「慰謝する」つまり、慰めたり和らげたりするお金のことです。慰謝料は、「示談金の一部」として提示されます。しかし、一定の事故にしか慰謝料は支払われないことには注意が必要です。

示談金の相場

 示談金は、任意保険に入っている加害者の場合、通常保険会社が提示することになります。

「一体このお金は、安いの?高いの?」

そんな疑問をお持ちの方に、ケースに即して示談金の相場についてここで解説いたします。

  • ケース1.交通事故で車や物が壊れてしまった(物損事故)!
  • ケース2.  通事故でけがをした!
  • ケース3.交通事故で家族がなくなってしまった!

*物損と死傷が同時に発生する場合は、ケース1と2、またはケース1と3の説明が当てはまります。

示談金の相場を理解する:ケース1.交通事故で車や物が壊れてしまった!

 交通事故で幸いにしてけがはなかったけれども、車が故障した・そのほか物が壊れたという場合、示談金は損害が出ている以上、支払われます。

相場が問題になりますが、ポイントとしては、下記のようなことが挙げられます。

  • 車や物の修理代がベースとなるが、全損の場合には、車を買い替える費用が支払われる
  • 高級車や新車に近い車は、評価損も損害額に含めることができる場合がある。しかし、慰謝料はまず支払われない
  • 車の場合、使えない間の代車費用も請求可能なことがある(営業車両等、必要性の認められる場合)

車の修理代や買い替え費用を示す領収書等帳票類・車のスペックや年式を示す資料・写真等の証拠を準備して、交渉に臨むことが必要となります。ただし、実際に示談に至る際、修理や買い替えをする必要はありません。見込み額でも請求が可能です。見積もり・同年代同型式の車の中古車相場などが証拠として使えることになります。

慰謝料は、物が故障から直れば精神的苦痛はなくなる、と考えられており、車の物損ではまず認められないと考えられます。物は客観的に評価されるため、「親から譲り受けた大事な車でほかに代えがたい」といった主観的な事情があったとしても、慰謝料が原則はない、と考えられるのです。

しかし、車が壊れたケースではなく、家の塀が壊れて、生命・身体に危険が及んだケース、交通事故でペットを殺傷してしまったケースで数万から数十万の慰謝料が認められたケースが下級審の判例にあります。

なお、新車や新品の価値を基準に修理代や買い替え費用が支払われるのではないことに注意しましょう。経過年数と減価償却を考慮した物の価値・修理代が基準とされています。 

示談金の相場を理解する:ケース2.交通事故でけがをした!

 交通事故でけがをした場合、損害の中には、

  • 積極損害 けがの治療代・入院費・付き添い代などの看護費・通院治療費および交通費等
  • 消極損害 休業損害・後遺障害による逸失利益

が含まれます。また、

  • 慰謝料

についても請求可能です。

積極損害は、現実の損害額を請求することができます。しかし、消極損害は、現実の損害額と、見込みを計算する後遺障害の場合の逸失利益のように、推定計算により計算される損害とがあります。それぞれの相場と計算方法を見ていきましょう。

  • 積極損害の相場と計算方法

積極損害の計算は、実際治療・入院・通院のためにかかった費用をベースに計算されます。

入院のみですべての傷害が治癒するケースもあまりないでしょうから、通院費も積極損害に含められて計算されることが通常です。

また、学齢のお子さんにけがをさせてしまったケースなどは、学校に通えなくなってしまったことから、学力低下を防ぐための家庭教師代等の学習費用も積極損害として支払われるケースがあります。

さらに、入院中の生活にかかる諸雑費も積極損害に含めることが可能です。

消極損害の相場と計算方法

休業損害

自賠責保険基準と任意保険および裁判基準では計算基準が違います

交通事故によって、働けなくなってしまった場合には、給与・賞与・諸手当から休業によって得られなくなる収入が生じます。これを休業損害として請求することが可能です。休業日数×1日当たりの収入を計算します。

しかし、休業損害は、日額の算定基準が自賠責保険基準と任意保険及び裁判基準では異なります。自賠責保険では、1日当たりの「基礎収入」が、5,700円から上限19,000円で計算されます。

これに対して、任意保険においては、もう少し実収入に近い数字が基準となります。さらに、弁護士基準であれば、裁判で認定されることが予測される事実関係が基準となりますから、5700円未満の収入しかない場合は、その額が適用されますし、19,000円を超えることが立証できれば、この額が基礎収入となり、休業損害が計算されます。

自賠責保険基準は、保険金額が120万円でおさえられているため、損害額が120万円未満の場合に適用されます。これを超えると、任意保険基準によることとなります。

注意すべきは、専業主婦・無職の場合でも、休業損害がもらえるケースがあることです。下級審に裁判例には認められたケースがあります。額は自賠責保険の範囲内である、とされています。

後遺障害の場合の逸失利益

「症状固定」後、障害等級を基準に算定されます

後遺障害は、損害保険料率算定機構が等級を認定します。後遺障害の等級(軽い順から14級から1級)にしたがった損害額が計算され、自賠責から損害賠償金の支払いがおこなわれます。もう治療ができなくなった時点=症状固定の時点で認定され、支払い手続きが行われます。

計算式:逸失利益=労働能力喪失率×収入額×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

労働能力喪失率は、14級の5%から、1~3級の100%まで、障害のために労働能力を喪失した割合を表す率です。また、ライプニッツ係数は、法定利率5%を複利計算し、中間利息を控除して、一時払いにするための係数として使われています。

慰謝料の相場と計算方法

慰謝料についても、逸失利益のところで説明した後遺障害の等級により相場が算出されています。基準収入額がここでも自賠責保険・任意保険基準・弁護士基準が異なるので、下の表のとおり、同じ等級でも三種類の額となります。

後遺障害等級 自賠責保険 任意保険基準 弁護士基準
後遺障害1級 1100万円 1300万円 2800万円
後遺障害2級 958万円 1120万円 2370万円
後遺障害3級 829万円 950万円 1990万円
後遺障害4級 712万円 800万円 1670万円
後遺障害5級 599万円 700万円 1400万円
後遺障害6級 498万円 600万円 1180万円
後遺障害7級 409万円 500万円 1000万円
後遺障害8級 324万円 400万円 830万円
後遺障害9級 245万円 300万円 690万円
後遺障害10級 187万円 200万円 550万円
後遺障害11級 135万円 150万円 420万円
後遺障害12級 93万円 100万円 290万円
後遺障害13級 57万円 60万円 180万円
後遺障害14級 32万円 40万円 110万円

入通院の場合の慰謝料も、自賠責基準・任意保険基準及び弁護士基準で計算されます。計算式は、1日当たり基礎収入額に治療日数または実通院日数×2を乗じたものとなります。自賠責基準で入通院慰謝料の1日当たり基礎収入額は上限が4200円となっており、任意保険基準は現在自由化され、また、計算方式も非公開であるため、相場というと見えにくいものとなっています。しかし、自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準の順に慰謝料が高くなる構造は、後遺障害の場合と変わらないと考えられます。

示談金の相場を理解する:ケース3.交通事故でご家族がなくなった

この場合には、①葬儀代 ②死亡のための逸失利益 ③慰謝料(死亡本人および遺族)が示談金として支払われます。

 

  • 葬儀代 自賠責保険の場合、葬儀代は60万円が限度との規定があります。しかし、立証可能な場合は、必要かつ妥当な実費として100万円まで認められます。弁護士基準では150万円ほどであり、裁判例で見ますとそれ以上認められたケースがあります。これも立証が可能な場合です。

 

  • 逸失利益の相場と計算方法 考え方は後遺障害の場合とあまり変わりがありませんが、労働能力喪失率の代わりに、生活費が控除されます。死亡された方は生活費を使わなくなるためです。基礎収入から一定の率(30%~50%)を控除することになります。

 

  • 慰謝料 自賠責基準か、通称日弁連の「赤本」に記載のある弁護士・裁判所基準によるかで、慰謝料の額が変わってきます。自賠責基準では、本人が一律350万円、請求者1名の場合が、550万円、2名で650万円、3名以上なら750万円となり、被害者の被扶養者がいる場合は、さらに200万円加算となります。これに対して、弁護士・裁判所基準ですと、2000万円~2800万円と、さらに高額になります。

 

まとめ

 示談金の相場は、裁判所で認められることが予想される額が基準の内容となる弁護士基準と、保険会社基準とでは額に開きがあります。また、個別の事情も裁判所での立証にかかっているとすると、なかなか一般人には予測が正確にはつきません。

納得のいかない示談金の提示を保険会社からされた場合や、弁護士に早めに相談し、疑問点を解消しながら戦略を立てることも一つの正しい対応策といえるでしょう。

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